2010年12月25日
弾の話~実弾の話~
知っていても人生においてそんなに得でも無い、テッポウウンチクのコーナー。
今回は知っているようで一番知らないかもしれない「実包」のお話です。
実包って?
「実包」と言うのは所謂(いわゆる)鉄砲の弾の事。左図の様な物を言います。
これは右図の様に幾つかのパーツで構成されています。
・弾丸(ブレット)
・薬莢(ケース)
・火薬(パウダー)
・雷管(プライマー)
と言う部品に別れており、実際に標的に向かい飛んでいくのは先端の弾丸のみとなり残りの部分は銃に残ります。
フィクションで、時たま銃に関する知識が薄い製作者(作者)が左図の実包全体が飛んでいるシーンを作ってしまう事が有りますが、これは当然間違いとなります。
実包はカートリッジとも呼ばれています。
銃の一大革命
銃の歴史は15世紀の前半には既に戦争で組織的に使用された記録があるそうです(フス戦争)。
そこから150年間ぐらいは所謂「火縄銃(マッチロック)」式の銃が運用されて行きます。
1650年、マッチロックに変わる新しい方式として「火打石(フリントロック)」式が開発されヨーロッパなどで使用されます。
マッチロック式に比べフリントロック式は火の準備などが不要でより手軽になりました。
その後アメリカ独立戦争などを挟み、1822年にアメリカで「パーカッションロック」式が開発されます。パーカッションロックは西部劇などで出てくるもので、「雷汞(らいこう)」とも呼ぶ雷酸水銀(らいさんすいぎん)をつめた金属製の小さなキャップ「雷管」を使用するもの。コレを火薬と弾を詰めた筒のお尻側にセットし、衝撃を加えると雷管内部の雷汞が爆発し火薬を起爆し弾を飛ばしてくれます。
従来のマッチロックやフリントロックと違い天候等に左右されず(水に濡れるとこれらは使えなくなる)、しかも簡単に発火出来る様になったことで銃の実用度が一気に高まりました。
パーカッションロックはアメリカ西部開拓期の戦闘(所謂インディアンとの戦闘)等で頻繁に使用されました。
さらに進化は進み、1858年にS&W社から初の金属薬莢使用の拳銃「NO.1リボルバー」が開発されます。この14年後にかの有名なコルトSAAも発売となります。
1893年にはドイツでヒューゴ・ボーチャードが自動拳銃を開発し、1914年にボルトアクションが登場、1950年には自動小銃が普及し始める、となり現在に至ります。
最初の鉄砲らしい鉄砲が1500年前半、そこから100~150年ぐらい経てマッチロックからフリントロックへ移り、170年ちょっとかかってようやくパーカッション式が登場します。
しかしパーカッション登場からは僅か36年で現代のカートリッジ式へと進化し、そこから35年後にはオートマチック第一号が登場。そして57年で自動小銃まで来てしまいます。
もちろん世界規模の戦争などが有った背景もありますが、パーカッション式、及びその直後のカートリッジ式以降の進化は速度とその能力が爆発的と言って良いでしょう。
雷管と薬莢(金属薬莢)の登場は特にその後の銃の進化に大きな影響を与えたわけです。
弾の威力=銃の威力
少年向けフィクションなどでよく登場するのが「圧倒的な威力を誇る」銃。
拳銃で有りながらありえないほどの破壊力を持つ、と言う設定は主人公を主人公たらしめる重要なファクターとして度々マンガやアニメ、ゲームやライトノベルで登場します。
中には拳銃とは思えないほど巨大であったりしますが、大半の作品では「強力な銃」と言う風に紹介されます。
しかし実際には「銃の威力」という言い方は正確では有りません。正しくは「弾の威力」になります。
銃はそれぞれ、使用できる弾の種類と言うものが決まっており、基本的に互換性と言うものは殆どありません(一部には互換出来る様に開発された弾も存在しますが)。
そして威力はそのそれぞれの弾が持つエネルギーで決まって行きます。発射装置である銃には「威力となるエネルギーのパワーをロスしない(下げない)様に」することは出来ますが銃によりパワーを上げることは出来ません。
最近はこの辺りを意識した漫画家、小説家も増えてきており、「強力なカートリッジ」「特殊なカートリッジ」を使える「強力な銃」と言う紹介をするものも増えています。
弾の種類で一喜一憂
弾の種類の話で必ず出てくるのが「7.62×51mmNATO弾」です。
この弾はその名称の通り、NATO(北大西洋条約機構)諸国での標準小銃弾として1950年に制定されました。主に主力となる小銃と支援火器である汎用機関銃(軽機関銃)の弾とされていました。
アメリカのM14、ドイツのG3、ベルギーのFAL、日本の64式他、当時のNATO加盟国はこの弾を採用したモデルを主力小銃としました。
しかしこの弾丸の採用は銃器の世界において一時期大きな失敗であったと言われ、今でもしばしば言われることが有ります。
この弾は高い貫通力、安定した直進性、着弾時の威力の高さなどに関しては申し分無いと言えます。
しかしその威力と引き換えに非常に強烈な反動となっています。この反動は単発での使用であれば制御できますが、フルオートで使った場合には余程の巨体と筋力を備えているなどの条件でも無い限り殆どの場合は制御不能となってしまうほどで、重量を許容される支援火器ならともかく、持って走る必要もある小銃ではあまりに現実的で無さ過ぎました。
この点は選定の際、イギリスなどから強く指摘されていましたが、アメリカが当時の自国の銃に合わせる為にゴリ押しして押し通した格好となったのも話を面倒なものにしていました。
しかもこの話をさらにややこしくしたのが、この弾の選定が事実上の失敗であったことを当のアメリカ軍がベトナム戦争で証明してしまったことでした(1964年にアメリカ軍はより口径の小さいM16へと変更している)。
アメリカ軍はそれまでフルオート使用をあまり重視しておらず、どちらかと言えば単発での威力を重視していたが故のことでしたが、銃の弾の選択が非常に重要である、と言うことの引き合いとして今でも頻繁にこの話は出てきます。
ちなみに、7.62mm弾ですが上記の通り単発射での使用においては極めて優秀だったこともあり、その後から現在は主に狙撃などの任務向で使用がされています。
223?308?357?45?38?
弾の表記として、M16等の5.56mmやM14他の7.62mm、ガバメントは10mmオートなんて言いますし、グロックやベレッタは9mmです。
しかし同時にM16の弾で.223だとか、G3などで.308、ガバの.45にパイソンは357マグナム・・・とmm表記以外の表示をしている弾が色々あります。
.223弾と5.56mm弾は同じじゃないの?7.62mmと.308は?.45だの.50だのって何ミリ?と言うのは昔から日本のトイガンファンの間では色々な論議になるところ。鉄砲関係を「趣味」にすると誰しもが必ず一度はぶつかる「壁」の様なものです。
実はこの表示、特に.45だの.38だの、または.357だの.223だの、と言うのはあんまり重要な意味をもっていないと言って良いのです。
例えば9mm弾。9mm弾は他にも.38や.380、.357なども測ってみれば殆どみんな9mmです。
なんでワザワザ色んな言い方があるの?どれかに統一すれば良いのに、とは思うのですが、これはいわば「商品名」なんです。
実際にはM16の.223弾とは.223レミントン弾、と言うレミントン社の商品。.308だって.308ウィンチェスター弾と言うウィンチェスターの商品であり、それらの商品名なんです。
中には.45ACP弾の様に0.45インチである事を表わすこともありますが、あまり当てには出来ません。そもそもこの表示は殆どの場合インチ表示を元にしていますが、弾頭部分のサイズとは必ずしも限らず、ケースのサイズだったり、リムのサイズだったり、表記はまちまちです。
ぶっちゃけ、この数字で使える銃と弾の確認は不可能と言ってよく、結局手持ちの銃でどの弾が使えるのか使えないのかなどはメーカーに問い合わせるなどの手段で把握するしかない、と言うのが現実です。
弾の種類いろいろ
最後に幾つか弾の種類と言うのを紹介してみましょう。
○フルメタルジャケット
映画のタイトルにもなってますが、これは先端の弾丸部分を文字通り全て真鍮を中心とした金属で覆ったもの。鉄砲の弾はご存知の通り鉛で出来ています。これは重量を稼ぐ意味合いからですが、鉛は非常に柔らかい金属な為に標的命中時に簡単に変形してしまい貫通力は高く有りません。この点を改善する為に金属で覆って貫通力を向上させたのがフルメタルジャケットと言うわけです。
先端部分は露出させたパーシャルジャケット弾と言うものもありますが、こちらは主に狩猟(大型獣)用。
これは先端が露出していると着弾時に大きく変形し、結果弾丸命中部周りにより大きな被害をもたらします。殺傷力が非常に高いものですが、後述のダムダム弾(ホローポイント弾)同様、「不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用すること」を禁ずるハーグ条約と言うものの都合で戦争では使いません。
さらに完全に金属で覆わない、ソフトポイントと言う弾もありますが、同様の理由で軍用では使いません。
○ダムダム弾(ホローポイント弾)
インドのダムダム工廠で製造されたからダムダム弾。
どんな弾かというと「拡張弾頭」を持つ弾のこと。今日ではこの種の弾の総称として使われることも有ります。
先端が火山の様に穴を開けた形状となっているのが一般的。
貫通力は低いのですが、人体などの軟標的に着弾した場合この火山状の先端がマッシュルームの様に大きく拡張・変形し数倍の円周サイズとなります。これによりより広範囲に被害を及ぼし着弾点の周りをズタズタにしつつ弾丸のエネルギーを全て標的内で消費し弾が標的内で停止します。
上記の通り、ハーグ条約と言う「戦争のルール」で使用を禁止されていますが、それ以外の狩猟・警察活動などでは広く使用されています。
特に警察では弾が標的で停止すると言う点は重要で、万が一にも貫通した弾がその他(人質など)に被害を及ぼすことを避けられる点は大きなメリットと考えられています。
主に拳銃弾などライフルなどに比べはるかに低い威力のもので採用されています。
その昔、アニメ「ルパンⅢ世」で着弾時に爆発する「爆裂弾」や「成型炸薬弾」のようなものの様に表現(製作者の勘違いでしょう)した事から長らくそういう弾だと信じられていましたが、もちろんそう言った物ではありません。
また映画などでフルメタルジャケット弾の先端にナイフなどで十字の切り込みを入れて即席の拡張弾頭弾にする、と言うシーンが時たまありますが、これも金属ジャケット部分が銃身内部に残ってしまったりと非常に危険で実際には行うべきではない使用法だと言えます。
○エクスプローダー
上記のホローポイント(ダムダム)弾の窪みに少量の炸薬を詰めたもの。
着弾時の衝撃で先端の炸薬が破裂し弾丸がより爆発的に拡張する、と言う効果を狙ったものでしたが、実際には人体などの軟標的の場合は炸薬が上手く破裂しない事が多く、狙った効果が得られませんでした(硬い標的なら破裂するんですが、そうすると今度は貫通できないし)。
現在は実効果が無く使用されていません。
名称から「火が出る」「発火する」と言うイメージがあるからか、この弾でガソリンなどに火をつける、と言うシーンが一部のマンガ等でありましたが、試した事無いので断言は出来ませんが、まず火は付かないだろうと思います。
○徹甲弾(アーマピアシング)
弾丸をより強度と重量のある素材で作った、対装甲用の高貫通力弾。小銃弾としては劣化ウラン弾が有名。
砲弾では無く弾丸と言うサイズの場合は実際には「高速徹甲弾(HVAP)」と言うのが正解だそうです。
弾の硬度と重さを上げて高速で撃ち出し、弾自体の運動エネルギーで装甲を貫通させる為の特殊弾です。
○曳光弾(トレーサー)
弾のお尻から光を出し、どこに向かって飛んで居るかを視覚的に判りやすくしたもの。
主にフルオートで使用するマシンガンなどに5発に1発などの割合で入れられ使用されます。
湾岸戦争時のTV映像などで光っている弾が飛んでいて「弾って光るんだ」と思った人が多かったそうですが(ガンダムなどの影響もあるのでしょう)、実際に光っているのはこのトレーサー弾。
見た目はマルイのフルオートトレーサーまんま、と言う感じだそうです。
○ゴム弾
非殺傷型として開発された弾丸。
形状は上記のホローポイントに近いくぼみのあるもの。発射され銃口から出た瞬間から広がり着弾時に衝撃を与える構造。
基本的には非殺傷弾となっていますが、距離が近いと広がり切らず人間程度の標的では問題無く貫通出来てしまうなど充分な殺傷力を発揮してしまいます。
また拡がったとしてもその打撃力はヘビー級ボクサー並と充分な威力でやっぱり死ぬ確率はかなりのもの。使い方が難しい弾だと言えます。
場合によってはその特性を利用して大型獣(熊など)を追い払うのにも使われます。
○フランジブル弾
銅やスズの粉末を押し固めて弾丸にした特殊弾。
人体に直接当たった場合は普通に貫通力を発揮し死亡させますが(むしろ内部で大きく広がるので殺傷力は高い)、壁や柱などの固い素材に当たった場合は貫通したり跳弾したりせずにその場で砕け散る様になります。
これにより屋内戦闘などで屋外への被害を抑える必要がある場合(市街地など)などに非常に重宝します。
○ワッドカッター
主に競技用に使用される先端がほぼ完全にぺったんこな弾。
見た目はへんてこりんですが、ライフリングとの接触面積が広く、より確実な回転が加わるなどして命中精度は高め。
なによりこの特殊な形状で標的紙に当たった時に穴あけパンチで穴を開けたようにキレイに穴が開くのが最大の特徴です。
どこに着弾したかを非常に確認しやすいので、競技用として人気があります。
エアガンはどうしても弾のサイズで言えば2種類。ハンドガンもライフルもSMGも殆どが6mmの同じ弾でマルシンの一部製品に8mmがある程度なため、銃ごとの弾の違いと言うのはピンと来ないものが有ります。
ただ、MP5とM4は確実に違う弾を実物はつかっていますし、だからこそそれぞれに使い道というものが存在しています。
この辺りを少し意識して見ると特殊部隊や警察SWATの装備が何故「ああなのか」が見えてきたりします。
映画などでも「良く判って居る人」が作った作品ではこの辺りに注意が払われ、より一層リアルな雰囲気を作ってくれます。
こういった部分を少し知るとより楽しめるようになります。
今回は知っているようで一番知らないかもしれない「実包」のお話です。
実包って?
「実包」と言うのは所謂(いわゆる)鉄砲の弾の事。左図の様な物を言います。
これは右図の様に幾つかのパーツで構成されています。
・弾丸(ブレット)
・薬莢(ケース)
・火薬(パウダー)
・雷管(プライマー)
と言う部品に別れており、実際に標的に向かい飛んでいくのは先端の弾丸のみとなり残りの部分は銃に残ります。
フィクションで、時たま銃に関する知識が薄い製作者(作者)が左図の実包全体が飛んでいるシーンを作ってしまう事が有りますが、これは当然間違いとなります。
実包はカートリッジとも呼ばれています。
銃の一大革命
銃の歴史は15世紀の前半には既に戦争で組織的に使用された記録があるそうです(フス戦争)。
そこから150年間ぐらいは所謂「火縄銃(マッチロック)」式の銃が運用されて行きます。
1650年、マッチロックに変わる新しい方式として「火打石(フリントロック)」式が開発されヨーロッパなどで使用されます。
マッチロック式に比べフリントロック式は火の準備などが不要でより手軽になりました。
その後アメリカ独立戦争などを挟み、1822年にアメリカで「パーカッションロック」式が開発されます。パーカッションロックは西部劇などで出てくるもので、「雷汞(らいこう)」とも呼ぶ雷酸水銀(らいさんすいぎん)をつめた金属製の小さなキャップ「雷管」を使用するもの。コレを火薬と弾を詰めた筒のお尻側にセットし、衝撃を加えると雷管内部の雷汞が爆発し火薬を起爆し弾を飛ばしてくれます。
従来のマッチロックやフリントロックと違い天候等に左右されず(水に濡れるとこれらは使えなくなる)、しかも簡単に発火出来る様になったことで銃の実用度が一気に高まりました。
パーカッションロックはアメリカ西部開拓期の戦闘(所謂インディアンとの戦闘)等で頻繁に使用されました。
さらに進化は進み、1858年にS&W社から初の金属薬莢使用の拳銃「NO.1リボルバー」が開発されます。この14年後にかの有名なコルトSAAも発売となります。
1893年にはドイツでヒューゴ・ボーチャードが自動拳銃を開発し、1914年にボルトアクションが登場、1950年には自動小銃が普及し始める、となり現在に至ります。
最初の鉄砲らしい鉄砲が1500年前半、そこから100~150年ぐらい経てマッチロックからフリントロックへ移り、170年ちょっとかかってようやくパーカッション式が登場します。
しかしパーカッション登場からは僅か36年で現代のカートリッジ式へと進化し、そこから35年後にはオートマチック第一号が登場。そして57年で自動小銃まで来てしまいます。
もちろん世界規模の戦争などが有った背景もありますが、パーカッション式、及びその直後のカートリッジ式以降の進化は速度とその能力が爆発的と言って良いでしょう。
雷管と薬莢(金属薬莢)の登場は特にその後の銃の進化に大きな影響を与えたわけです。
弾の威力=銃の威力
少年向けフィクションなどでよく登場するのが「圧倒的な威力を誇る」銃。
拳銃で有りながらありえないほどの破壊力を持つ、と言う設定は主人公を主人公たらしめる重要なファクターとして度々マンガやアニメ、ゲームやライトノベルで登場します。
中には拳銃とは思えないほど巨大であったりしますが、大半の作品では「強力な銃」と言う風に紹介されます。
しかし実際には「銃の威力」という言い方は正確では有りません。正しくは「弾の威力」になります。
銃はそれぞれ、使用できる弾の種類と言うものが決まっており、基本的に互換性と言うものは殆どありません(一部には互換出来る様に開発された弾も存在しますが)。
そして威力はそのそれぞれの弾が持つエネルギーで決まって行きます。発射装置である銃には「威力となるエネルギーのパワーをロスしない(下げない)様に」することは出来ますが銃によりパワーを上げることは出来ません。
最近はこの辺りを意識した漫画家、小説家も増えてきており、「強力なカートリッジ」「特殊なカートリッジ」を使える「強力な銃」と言う紹介をするものも増えています。
弾の種類で一喜一憂
弾の種類の話で必ず出てくるのが「7.62×51mmNATO弾」です。
この弾はその名称の通り、NATO(北大西洋条約機構)諸国での標準小銃弾として1950年に制定されました。主に主力となる小銃と支援火器である汎用機関銃(軽機関銃)の弾とされていました。
アメリカのM14、ドイツのG3、ベルギーのFAL、日本の64式他、当時のNATO加盟国はこの弾を採用したモデルを主力小銃としました。
しかしこの弾丸の採用は銃器の世界において一時期大きな失敗であったと言われ、今でもしばしば言われることが有ります。
この弾は高い貫通力、安定した直進性、着弾時の威力の高さなどに関しては申し分無いと言えます。
しかしその威力と引き換えに非常に強烈な反動となっています。この反動は単発での使用であれば制御できますが、フルオートで使った場合には余程の巨体と筋力を備えているなどの条件でも無い限り殆どの場合は制御不能となってしまうほどで、重量を許容される支援火器ならともかく、持って走る必要もある小銃ではあまりに現実的で無さ過ぎました。
この点は選定の際、イギリスなどから強く指摘されていましたが、アメリカが当時の自国の銃に合わせる為にゴリ押しして押し通した格好となったのも話を面倒なものにしていました。
しかもこの話をさらにややこしくしたのが、この弾の選定が事実上の失敗であったことを当のアメリカ軍がベトナム戦争で証明してしまったことでした(1964年にアメリカ軍はより口径の小さいM16へと変更している)。
アメリカ軍はそれまでフルオート使用をあまり重視しておらず、どちらかと言えば単発での威力を重視していたが故のことでしたが、銃の弾の選択が非常に重要である、と言うことの引き合いとして今でも頻繁にこの話は出てきます。
ちなみに、7.62mm弾ですが上記の通り単発射での使用においては極めて優秀だったこともあり、その後から現在は主に狙撃などの任務向で使用がされています。
223?308?357?45?38?
弾の表記として、M16等の5.56mmやM14他の7.62mm、ガバメントは10mmオートなんて言いますし、グロックやベレッタは9mmです。
しかし同時にM16の弾で.223だとか、G3などで.308、ガバの.45にパイソンは357マグナム・・・とmm表記以外の表示をしている弾が色々あります。
.223弾と5.56mm弾は同じじゃないの?7.62mmと.308は?.45だの.50だのって何ミリ?と言うのは昔から日本のトイガンファンの間では色々な論議になるところ。鉄砲関係を「趣味」にすると誰しもが必ず一度はぶつかる「壁」の様なものです。
実はこの表示、特に.45だの.38だの、または.357だの.223だの、と言うのはあんまり重要な意味をもっていないと言って良いのです。
例えば9mm弾。9mm弾は他にも.38や.380、.357なども測ってみれば殆どみんな9mmです。
なんでワザワザ色んな言い方があるの?どれかに統一すれば良いのに、とは思うのですが、これはいわば「商品名」なんです。
実際にはM16の.223弾とは.223レミントン弾、と言うレミントン社の商品。.308だって.308ウィンチェスター弾と言うウィンチェスターの商品であり、それらの商品名なんです。
中には.45ACP弾の様に0.45インチである事を表わすこともありますが、あまり当てには出来ません。そもそもこの表示は殆どの場合インチ表示を元にしていますが、弾頭部分のサイズとは必ずしも限らず、ケースのサイズだったり、リムのサイズだったり、表記はまちまちです。
ぶっちゃけ、この数字で使える銃と弾の確認は不可能と言ってよく、結局手持ちの銃でどの弾が使えるのか使えないのかなどはメーカーに問い合わせるなどの手段で把握するしかない、と言うのが現実です。
弾の種類いろいろ
最後に幾つか弾の種類と言うのを紹介してみましょう。
○フルメタルジャケット
映画のタイトルにもなってますが、これは先端の弾丸部分を文字通り全て真鍮を中心とした金属で覆ったもの。鉄砲の弾はご存知の通り鉛で出来ています。これは重量を稼ぐ意味合いからですが、鉛は非常に柔らかい金属な為に標的命中時に簡単に変形してしまい貫通力は高く有りません。この点を改善する為に金属で覆って貫通力を向上させたのがフルメタルジャケットと言うわけです。
先端部分は露出させたパーシャルジャケット弾と言うものもありますが、こちらは主に狩猟(大型獣)用。
これは先端が露出していると着弾時に大きく変形し、結果弾丸命中部周りにより大きな被害をもたらします。殺傷力が非常に高いものですが、後述のダムダム弾(ホローポイント弾)同様、「不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用すること」を禁ずるハーグ条約と言うものの都合で戦争では使いません。
さらに完全に金属で覆わない、ソフトポイントと言う弾もありますが、同様の理由で軍用では使いません。
○ダムダム弾(ホローポイント弾)
インドのダムダム工廠で製造されたからダムダム弾。
どんな弾かというと「拡張弾頭」を持つ弾のこと。今日ではこの種の弾の総称として使われることも有ります。
先端が火山の様に穴を開けた形状となっているのが一般的。
貫通力は低いのですが、人体などの軟標的に着弾した場合この火山状の先端がマッシュルームの様に大きく拡張・変形し数倍の円周サイズとなります。これによりより広範囲に被害を及ぼし着弾点の周りをズタズタにしつつ弾丸のエネルギーを全て標的内で消費し弾が標的内で停止します。
上記の通り、ハーグ条約と言う「戦争のルール」で使用を禁止されていますが、それ以外の狩猟・警察活動などでは広く使用されています。
特に警察では弾が標的で停止すると言う点は重要で、万が一にも貫通した弾がその他(人質など)に被害を及ぼすことを避けられる点は大きなメリットと考えられています。
主に拳銃弾などライフルなどに比べはるかに低い威力のもので採用されています。
その昔、アニメ「ルパンⅢ世」で着弾時に爆発する「爆裂弾」や「成型炸薬弾」のようなものの様に表現(製作者の勘違いでしょう)した事から長らくそういう弾だと信じられていましたが、もちろんそう言った物ではありません。
また映画などでフルメタルジャケット弾の先端にナイフなどで十字の切り込みを入れて即席の拡張弾頭弾にする、と言うシーンが時たまありますが、これも金属ジャケット部分が銃身内部に残ってしまったりと非常に危険で実際には行うべきではない使用法だと言えます。
○エクスプローダー
上記のホローポイント(ダムダム)弾の窪みに少量の炸薬を詰めたもの。
着弾時の衝撃で先端の炸薬が破裂し弾丸がより爆発的に拡張する、と言う効果を狙ったものでしたが、実際には人体などの軟標的の場合は炸薬が上手く破裂しない事が多く、狙った効果が得られませんでした(硬い標的なら破裂するんですが、そうすると今度は貫通できないし)。
現在は実効果が無く使用されていません。
名称から「火が出る」「発火する」と言うイメージがあるからか、この弾でガソリンなどに火をつける、と言うシーンが一部のマンガ等でありましたが、試した事無いので断言は出来ませんが、まず火は付かないだろうと思います。
○徹甲弾(アーマピアシング)
弾丸をより強度と重量のある素材で作った、対装甲用の高貫通力弾。小銃弾としては劣化ウラン弾が有名。
砲弾では無く弾丸と言うサイズの場合は実際には「高速徹甲弾(HVAP)」と言うのが正解だそうです。
弾の硬度と重さを上げて高速で撃ち出し、弾自体の運動エネルギーで装甲を貫通させる為の特殊弾です。
○曳光弾(トレーサー)
弾のお尻から光を出し、どこに向かって飛んで居るかを視覚的に判りやすくしたもの。
主にフルオートで使用するマシンガンなどに5発に1発などの割合で入れられ使用されます。
湾岸戦争時のTV映像などで光っている弾が飛んでいて「弾って光るんだ」と思った人が多かったそうですが(ガンダムなどの影響もあるのでしょう)、実際に光っているのはこのトレーサー弾。
見た目はマルイのフルオートトレーサーまんま、と言う感じだそうです。
○ゴム弾
非殺傷型として開発された弾丸。
形状は上記のホローポイントに近いくぼみのあるもの。発射され銃口から出た瞬間から広がり着弾時に衝撃を与える構造。
基本的には非殺傷弾となっていますが、距離が近いと広がり切らず人間程度の標的では問題無く貫通出来てしまうなど充分な殺傷力を発揮してしまいます。
また拡がったとしてもその打撃力はヘビー級ボクサー並と充分な威力でやっぱり死ぬ確率はかなりのもの。使い方が難しい弾だと言えます。
場合によってはその特性を利用して大型獣(熊など)を追い払うのにも使われます。
○フランジブル弾
銅やスズの粉末を押し固めて弾丸にした特殊弾。
人体に直接当たった場合は普通に貫通力を発揮し死亡させますが(むしろ内部で大きく広がるので殺傷力は高い)、壁や柱などの固い素材に当たった場合は貫通したり跳弾したりせずにその場で砕け散る様になります。
これにより屋内戦闘などで屋外への被害を抑える必要がある場合(市街地など)などに非常に重宝します。
○ワッドカッター
主に競技用に使用される先端がほぼ完全にぺったんこな弾。
見た目はへんてこりんですが、ライフリングとの接触面積が広く、より確実な回転が加わるなどして命中精度は高め。
なによりこの特殊な形状で標的紙に当たった時に穴あけパンチで穴を開けたようにキレイに穴が開くのが最大の特徴です。
どこに着弾したかを非常に確認しやすいので、競技用として人気があります。
エアガンはどうしても弾のサイズで言えば2種類。ハンドガンもライフルもSMGも殆どが6mmの同じ弾でマルシンの一部製品に8mmがある程度なため、銃ごとの弾の違いと言うのはピンと来ないものが有ります。
ただ、MP5とM4は確実に違う弾を実物はつかっていますし、だからこそそれぞれに使い道というものが存在しています。
この辺りを少し意識して見ると特殊部隊や警察SWATの装備が何故「ああなのか」が見えてきたりします。
映画などでも「良く判って居る人」が作った作品ではこの辺りに注意が払われ、より一層リアルな雰囲気を作ってくれます。
こういった部分を少し知るとより楽しめるようになります。