2010年04月26日
スコープの乗せ方
スナイパーライフル、スコープの話をしましたので、この話もしておいた方が良いかと。いいタイミングですので。
スコープの乗せ方の話です。今回はかなりの長文になる予定です。
~マウントベースの話~
まず、スコープやドットサイトを載せる際に最も重要、要となるのがマウントベースです。
なんと言ってもこの部分に積み上げていく、その名の通り基礎となる部分ですから十分注意して取り付けなければなりません。
写真はM4A1ですのでマウントベースは本体一体で後から取り付けるわけでは有りませんが、これと同じ様に真上から見たときにはぴったりと重なり、真横から見たら平行、となっていなくてはいけません。必要であれば取り付け部分を削ったり紙(大学ノートの紙や光沢の有るチラシの紙がオススメです)を挟んだりして調整してください。
~マウントリングの話~
これはぶっちゃけると一発で決まると思わない方が良いです。
マウントベースはあまり種類が豊富な事は少ないですが、マウントリングは非常に種類が豊富。それだけにベストなリング、と言うのはなかなか難しいものがあります。
基本としてはまず、マウントベースとその周りの状態(干渉するものが無いかなど)を確認し、搭載するスコープの対物レンズ径などから高さを決めて行きます。図を参考にして下さい。
もしマウントベース近辺に突き出し(リアサイトなど)が有る場合はその部分にスコープが干渉するかどうかでその干渉をかわすためにさらに高いものをチョイスする必要もあります。
ところでマウントリングの高さですが、上のように干渉することなどを考えれば出来るだけ背の高いものを選んでおけば良いのでは?と思う方も居るかと思います。
取り付けの事だけ考えれば当然、そっちの方が良いわけですが、そうもいかない事情があります。
その事情とはスコープとバレルが離れれば離れるほど誤差が大きくなってしまう、と言う点です。
スコープの視線とバレルから発射される弾の線、この二つの線を標的上で交わった状態がスコープの調整が出た状態(具体的な調整は後述)なのですが、この線のスタート地点が離れていればいるほど距離が変化した際の誤差が大きくなってしまいます。
上の図(クリックすると大きな図が見れます)はかなり簡易な図ですが、右端の小さな丸が調整時の点、中央付近の大きな楕円がその手前の狙点となります。調整点での結果はどちらも一緒ですが、それより手前(又は奥)の距離ではどうやってもスコープの中心と実際の弾の通り道はずれが生じます。
このずれがスコープとバレルの位置が近い上より遠い下の方が大きくずれているのがお判りになりますでしょうか。
つまり距離が設定した場所より近い(又は遠い)際には上下の誤差分を考慮に入れて狙いを定めるわけですが、スコープとバレルの距離が遠ければ遠いほど誤差が大きくなり狙いづらくなっていく、と言うわけです。
通常はこの点を嫌って、出来るだけバレルとスコープを近づけてセットしようとするわけなのです。
このあたりは出来ればギリギリにしたいところですが、最初は少し余裕を見て(お店でマウントリングのチョイスを任された場合は多少安全マージンを上乗せした高さにします)高めのサイズを選びます。
またスコープのサイズ、周りの干渉とは別に射手の構え方や使用するゴーグルの形状でも高めのものを選ばなければならないことも有ります。
~スコープの装着~
ではスコープをのせていきましょう。マウントベースは既にしっかりと装着されているとして話を進めます。
まずはマウントリングを分解(下図右上の状態に)し、マウントベースに仮留めします。
前後2つとも同じ様にして、スコープを上に乗せます。その状態で銃を軽く構えてスコープを覗いてみてください。覗いてみてキチンとスコープが見えていればその位置、駄目なら仮留めの位置をずらして調整してください。
何度か繰り返し、これでOK、となったら次です。
マウントリングの位置が決まれば、スコープを実際に固定して行きます。
マウントリングのスコープ取り付け部のネジは左右1個ずつ、2個ずつ、3個ずつ、と幾つか種類がありますが、全て共通して言えるのは全てのネジを均等に締めること・左右の隙間が均等になるようにすること(上図下段)です。
1個ずつの場合は左右代わる代わる締めればOKですが、2個や3個の場合は少し工夫が必要です。
図は左右3個ずつ、6個のネジがあるリングの模式図です。
①を軽く締めたら⑥へ、⑥から③へ、③から④へ、④から①へ、そして再び⑥へ・・・と締めて行きます。②と⑤は最後に締めていく方が手間がありません(本当は②⑤も絡めて均等に締める方が良いのですが、この方法でもあまり問題はありません)。注意点はともかく均等にしまるように意識することです。4個ネジ(左右2個タイプ)は最後の②と⑤を締める、が無い以外は全く一緒です。
片方に偏った締め方になってしまうとスコープが曲がって付いてしまうので注意が必要です。
完全固定の前にスコープの垂直と、前後位置の微調整をします。
銃を後ろから少し離れてみて、グリップ、ストック、フレーム、マウントベース、マウントリングを繋いだ一直線の垂直線をイメージしてください。基本的にはこの垂直線とスコープのレティクルの垂直方向の線がぴったりと合う様に調整して、それから最終固定を行います。
ドットサイト用の画像で申し訳ありませんが、概念は一緒なので画像を一枚貼っておきます。
調整が完了したら完全にネジを締めこんで固定完了です。
~スコープ調整~
スコープ調整にあたり、次のものが必要になります。極力近い状態を準備してください。
・15~20mの射撃が可能な開けた場所
・銃を固定することが出来る台
・着弾を確認することが出来る標的紙とそれを固定する箱など。
=最初に=
まず標的を15m程の距離(これは各人で一番射撃を行うことの多い距離に設定します。初めての場合は一番平均的な15mで)にセット
=銃を固定=
銃は出来れば固定するのをオススメします。完全固定は難しいですが、バイポッドなどを使い出来るだけ動かないように工夫してください。
=実際に射撃=
銃がある程度固定できたら標的に向かって射撃を行います。この時スコープを覗か無くてもOK。もしアイアンサイトがある&見れるモデルであればアイアンサイトで狙いを標的に定めて射撃を行ってください。特に厳密な規定があるわけではないですが、5発ほど撃ち込むのが良いでしょう。
図のように銃が固定されていれば場所はともかく有る程度集まって当たるはずです。
=着弾範囲の設定=
次にこの着弾した場所を丸で囲みます。出来るだけ正円になるようにしますが、コンパスなどを使用する必要はありません。
丸で囲んだら次はその丸の中心に点をつけます。この場所に着弾が無くてもとりあえず気にしない(理由は後述)で。
=レティクル調整=
上記作業が済んだらスコープのレティクル位置の調整を行います。銃を固定して有ればこの作業が非常に楽になります。
スコープでは無くドットサイトで申し訳ありませんが、場所は同じなので。
この部分を調整し、先ほどの中心点にレティクルの中心を合わせます。
=調整・その2=
上記で中心とレティクルが合ったら標的の紙を新しいものに換えて同じ作業を数度繰り返し微調整を行います。
ここでの最大の注意点は「一発ずつ調整はしない」と言う事。
一発ずつ調整してたらいつまで経っても終わりません。エアガンに限らずワンホールでの着弾などそうそう出来るものでは無く、実際には一発毎に誤差が発生します。その誤差に毎回あわせてたらどうにもなりません。そこでレティクルの調整は「点では無く範囲で考える」様にして下さい。より厳密なスコープ調整や銃本体のカスタムとはこの範囲を小さくしていく事、と考えると理解しやすくなるかと思います。
=ボルトアクションだけ出来る裏技=
ボルトアクション限定の裏技ですが、調整作業をグッと楽にする方法があります。
上記の射撃を行う前に、まずボルトを抜いて銃を標的に向けて固定します。そして抜いたボルトの部分の後ろから覗くとバレルの後ろ側から覗き込むことが可能になります。この状態で標的を見えるように置き方を調整し、そしてレティクルを調整してやると有る程度位置が撃たずに合ってしまいます。
この作業の後にボルトを戻して同じ様に微調整すれば作業が完了です。かなり楽になりますのでオススメです。
~作業完了~
一連の作業で納得したら作業完了です。そうです、スコープの取り付けは最終的に射手が納得したところで終了なのです。
徹底的に拘っても良いですし、そこそこのところで切り上げてしまってもかまいません。いい加減では困りますが、あまり拘りすぎてドツボに嵌るのも考え物です。
この作業、ゼロインが終了した後は出来ればハードタイプのライフルケースなどに収納し、衝撃や外圧が掛からないようにして保管してください。スコープはデリケートなもの。ちょっとしたことでもずれてしまいます。
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