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　12月14日は「忠臣蔵」で有名な赤穂浪士の討ち入りがあった日です。制式には旧暦と新暦で日にちは違うのですが、今でもこの日付を重視し、この時期には必ずなんらかのドラマや話題が出てきます。
　このお話、江戸中期にあった現実の事件「赤穂浪士討ち入り事件」を基に作られた当時の人形浄瑠璃（文楽）や今変な方向で話題の歌舞伎の題目「仮名手本忠臣蔵」を基にしたもの。
　日本人が古くから大好きな「仇討」「忠義に殉じる」と言った悲劇的なストーリーが受け、現代まで長く愛されているお話です。

　このお話の見所と言えばやはりクライマックス、赤穂浪士四十七士による吉良邸への討ち入りですが、そもそも浪士たちが討ち居る理由となった点はドラマなどでは序盤でさっさと終わらされたりすることも多く案外詳しく知らないと言う人も多い様です。
　しかも実はその真実は劇中で語られるものとは少々違っているようです。
　そんなわけで、今回は忠臣蔵の序盤、吉良上野介と浅野匠頭の確執と刃傷沙汰に関してのお話。
　ムダ話シリーズにしては少し真面目なお話です。

吉良と浅野
　このお話は最初、三河の旗本　吉良上野介（きら　こうずけのすけ）が播磨の大名　浅野匠頭（あさの　たくみのかみ）を様々ないじめ・嫌がらせを行うところから始まります。今で言うところのパワハラです。
　これは様々な理由が言われていますが、実のところ真実は語られず終いだったため今も謎が多くあります。

　様々な説が唱えられていますが、その中でも信憑性があり、支持者も多いのが
・吉良から要求された賄賂を浅野が突っぱねたから
　と言う賄賂説と
・浅野家がお役（仕事）上で必要な出費を出し惜しみ、それを吉良に咎められたから
　と言う出し惜しみ説があるそうです。
　前者は「忠臣蔵」と言うお話では一般的で、こちらを軸にお話を進めることが多くあります。また幾つかの記録には浅野の家臣が吉良へ賄賂を送るべき、と進言したのを浅野が突っぱねた、と言うものが残っており、それなりの信憑性が有ります。
　後者も同様の記録が残っています。
　吉良・浅野ともに饗応役と言う朝廷からの使い（お客様）をもてなす、いわば接待係なのですが、そのお役をするための費用に例年1200両掛かるところを浅野は700両しか出さず、それに吉良が意義を申し出た、となっているそうです。

　お話的にはどちらの場合も吉良が悪、浅野が被害者と言う視点で描かれる為、前者の場合はストレートに賄賂＝悪とし、後者の場合でもなんらかの理由で金銭的に逼迫している為出したくても出せないところを吉良に馬鹿にされる、と言う演出がされる場合が多く見られます。また吉良がわざと正確な数字を教えずに少なくさせ、そこを突っ込んだと言う説も有ります。
　しかしこれらは一つ一つに実は反論があります。

　まず、賄賂説。今日では賄賂と言うのは非常に悪いイメージです。しかしこれをお礼などと読み替えたらどうでしょう？
　吉良は浅野の上司であり、仕事上の先輩です。一緒に仕事をしていく上で今でもお中元やお歳暮などをお金でこそ無くても品物を送る風習がある日本ではお礼としてお金を包むのは必ずしもおかしな行為では有りませんでした。
　むしろそう言ったお礼を軽んじ、拒否した浅野が有る意味礼儀知らず、と罵られても的はずれでは無い、とも見れます。

　次に少なくしか出せなかった、と言う説ですが、これは有る意味論外。
　当時の幕府運営では各大名が与えられた仕事に沿ってそれぞれ出資するスタイルが中心。それだけに高い位の仕事では金額も大きくなるわけですが、その分高い位としての地位や名誉が得られるわけです。逆に言えばその様な出資が出来無いので有ればお役を返上するべきであり、それをしなかったのは浅野の落度と謗られても文句は言えません。

　最後にウソを言われた、と言う説ですが、これも考えられません。
　実はこの説を採用した場合の演出は浅野が始めてその仕事に就いたかのように描かれますが、実は浅野は数年前よりやっており、今更知らなかったと言うことは考えられません。

　二人の確執は他にも様々あり、中には吉良が浅野の奥方へ横恋慕した、などと言ったものもあったようです。
　ただ、今日は検証も進み、実のところ吉良が一方的に悪い、とする説を唱える人は殆どおらず、むしろ世間知らずな浅野側にも多分に非が有ったとする向きが一般的です。

　歴史的にも非常に興味深い「忠臣蔵」。少し突っ込んで調べてみると案外面白い話を覗けるかも知れませんよ。